2026.10.07

世界で見つけ、地域へ届ける。ミラノサローネ視察から見えた専門商社の仕事

イタリア・ミラノで毎年4月に開催される、世界最大級のデザインイベント「ミラノサローネ」。
世界中から家具やインテリア、住宅設備などのメーカーやデザイナーが集まり、最新のデザインだけでなく、これからの暮らし方や空間のあり方まで提案される場です。
住宅設備や建材を扱う渡辺パイプでは、継続してこのミラノサローネを視察しています。
とはいえ、目的は「海外の最新デザインを見に行くこと」だけではありません。
現地で得た情報を持ち帰り、国内のお客様がこれからの商品企画や空間づくりを考えるためのヒントに変える。そして、その情報を全国の営業現場を通じてお客様へ届けていく。
そこには、商品を仕入れて販売するだけではない、専門商社ならではの仕事があります。

今回は、ミラノサローネ視察を企画した住建事業部の井上部長と、実際に現地を訪れた近田さんに話を聞きました。

なぜ、商社が世界のデザインを見るのか

――まず、ミラノサローネ視察の目的について教えてください。
井上:住宅業界は、これまで以上に「性能」だけでなく「デザイン」が求められるようになっています。
一方で、私たちがお付き合いしている地域の工務店様や住宅会社様の中には、海外まで足を運んで世界のトレンドを直接見ることが難しいお客様も少なくありません。
国内に入ってくる情報だけで住宅を企画していると、どうしても市場に出てきたものを後から取り入れる形になりやすい。
だからこそ、私たち自身が世界で何が起きているのかをできるだけ早く見て、それをお客様に届けたいと考えています。
 
――ミラノのデザインを、そのまま日本の住宅に取り入れるのでしょうか。
井上:「ミラノではこうだったから、こうしましょう」と決めつけるものではありません。
私たちが見てきた色や素材、形、考え方をできるだけそのままお伝えして、そこからお客様自身の住宅企画に活かすヒントを見つけていただく。
例えば、家具のデザインから床や壁の素材を考えることもありますし、空間全体の色使いから新しい発想が生まれることもあります。
答えを渡すというより、発想のきっかけを届ける。それが私たちの役割だと思っています。

日本とはまったく違った。「商品」ではなく「体験」を見せる展示

実際にミラノを訪れた近田さんがまず驚いたのは、その規模と展示のつくり込みでした。

――現地で印象的だったことはありますか。
近田:色そのものが大きく変化しているというより、最近は素材の質感や形の変化が印象的ですね。例えば、以前と比べて丸みのあるデザインが増えていると感じます。
ただ、それ以上に大きな変化だと感じるのが、空間全体が一体化してきていることです。キッチンだからキッチン、トイレだからトイレと、それぞれを単体の設備として考えるのではなく、どれも空間を構成する一つの“造形”として捉えられているんです。
そのため、商品単体のデザインや機能を見るというよりも、「空間全体の中で、その商品がどう見えるのか、どんな雰囲気を生み出すのか」という視点が、より強くなっていると感じます。
こうした感覚は、カタログで商品だけを見ていても、なかなか分かりません。実際に現地へ足を運び、空間そのものを体験するからこそ見えてくるものがあると思います。

ミラノサローネ視察を始めたことで、渡辺パイプの商品提案にも変化が生まれています。

井上:以前は、商材メーカーさんから聞いた商品の特徴を、そのままお客様に伝えることが中心でした。
でも世界のデザインを見ることで、商品の色や形と、その背景にあるトレンドがつながって見えるようになったんです。そうすると、「なぜこのデザインなのか」を自分たちなりの視点で考え、提案できる。
メーカーさんから聞いたことだけでなく、自分たちが見て、感じて、考えたことを加えることで、提案に深みが生まれていると思います。最初から正解があったわけではありません。
「この話は反応が良かった」「これはあまり響かなかった」。イベントごとにお客様の反応を確かめながら、伝え方を少しずつ変えてきました。

井上:住宅業界では、商品やデザインを選ぶ際に関わる方も変化しています。施工性や機能を重視する担当者だけでなく、インテリアコーディネーターなど、空間全体のデザインを考える人と話す機会も増えました。だからこそ、営業する側にも「機能が優れている」だけではない、新しい提案の引き出しが必要になっています。もちろん、数人の社員が海外で学んだだけでは、その価値は広がりません。大切なのは、得た情報をどう届けるかです。
近田さんは現地滞在中、撮影した映像をその日のうちに編集し、リアルタイムで発信しています。


近田:配信動画では、できるだけ現地の臨場感を届けることを意識しています。
その日に見たものを、その日に編集して発信する。「今、ミラノではこんなことが起きている」という空気まで伝えたいんです。

一方、帰国後は、トレンドを紹介するだけでなく、「実際の空間提案にどう落とし込むか」まで考えます。ミラノで見た空間と国内メーカーの商品を結び付け、具体的な提案につながる形で伝えることを大切にしています。

SNSでの発信だけでなく、全国各地でリアルイベントも開催しています。海外の情報に触れる機会が少ない地域のお客様にも、ミラノで得た気づきを直接届け、実際の提案に活かしてもらうためです。
中部支店 浜松エリアでも、昨年度イベントを開催し、ミラノサローネで見られたデザインや空間づくりのトレンドをお客様に紹介しました。

担当の中部支店 名古屋名東住設サービスセンター所長 鈴木さんはこう話します。


鈴木: いつもとは少し違った形でトレンドを体感していただきたいと考え、今回は結婚式場の披露宴会場を使ってイベントを開催しました。結婚式場ならではのラグジュアリーな空間は、インテリアコーディネーターの皆様にも好評でした。そうした非日常的な雰囲気の中で、ミラノサローネのレポートを交えながら、各メーカー様にもそれぞれの視点から最新のデザインや商材をご紹介いただきました。単にトレンドをお伝えするだけでなく、実際の提案にどう活かせるかまでイメージしていただける場を目指しました。お客様から「提案力のある会社として、これからも付き合っていきたい」という声をいただけたことも嬉しく、今後の案件や販売につながるきっかけにしていきたいと思っています。

専門商社の仕事は、商品を仕入れて販売するだけではありません。世界のトレンドを捉え、提案に活かせる情報へ変え、お客様へ届けていく。メーカーとお客様をつなぐ立場だからこそ、幅広い情報を組み合わせ、新たな提案につなげることができます。「情報」もまた、渡辺パイプが提供する価値の一つです。

「好き」や「伝えたい」が、仕事を広げていく

最後に、これから社会に出る学生のみなさんに向けて、二人からメッセージをいただきました。

井上:新入社員のみなさんには、「まずインテリアを好きになってほしい」とよく話します。住宅は、お客様にとって人生で何度もある買い物ではありません。
その大きな出来事に関われる仕事ですし、自分の興味や「好き」という気持ちを、提案の価値につなげられる仕事でもあります。

近田:私も、もともとインテリアやデザインに詳しかったわけではありません。でも、やってみることで知識が身につき、できることも増えていきました。学生のみなさんにも、「やったことがないからできない」と決めつけず、まずは挑戦してみてほしいです。誰もやっていないことなら、なおさら面白いと思います。

世界のトレンドを見る人がいる。
それを、お客様に使える情報へ変える人がいる。
さらに、その情報を地域のお客様へ届ける営業がいる。

一人の仕事だけでは、価値にはならない。
情報と商品、人と人をつなぎながら、新しい提案をつくっていく。
ミラノサローネへの視察から見えてきたのは、そんな渡辺パイプの仕事でした。

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